2011年1月30日日曜日

フランス国立文書館(CARAN)の利用法

考えてみれば、CARANの利用方法についてまず書かないと、先に書いたフォンテーヌブローの利用方法を書いても意味がないので、CARANの利用方法について書いてみます。と言っても、今フィレンツェというのもあるし、ここ最近はCARANに行っていないので、細かい利用方法は忘れていますが…。(2月1日にもろもろ修正)

アーカイブ名称 Archives nationales LE CARAN - Centre d'accueil et de recherche des Archives nationales
住所 11, rue des Quatre Fils, 75003 Paris
*パリの地図を買うと、マレ地区のある3区に大きくArchives nationalesとあるが、これはCARANとSoubise館(歴史博物館)を会わせた全体であること、Soubise館とCARANとは入口が違い、ここの地図にあるように、上記住所のようにrue des Quatre Filsの入口から入ること。

開室時間:9時~16時45分(新しい史料の閲覧は16時20分ごろを過ぎると出来なくなります)。
      月曜~土曜

■そもそもCARANとは何なのか?
私はピュアなフランス史研究者ではないので理解に至らないところがあると思いますが、自分の理解では、仏国立文書館の「パリ館」に保存されている史料を閲覧するための場所(組織と施設)をCARANと言います。

■登録
CARANの史料を閲覧するためには登録する必要があります(しかも有料)。今はオンラインでの仮登録もできます。仮登録すれば、史料の注文を予約しておくことができ、短期訪問の際時間を節約できます(逆に言うと登録しないと史料を予約も閲覧もできない)。
仮登録していても、現地に行ったら本登録してカードを発行してもらわないといけません(カードがないと閲覧室に入れない)。閲覧室は、CARANの建物に入ったら奥にある、ガラスの仕切りの向こうの部屋です。
登録に必要なのは身分証明書(パスポート)のみ。事前に書類等を用意する必要はありません。

■目録室から閲覧室へ
CARANの建物は、地上階が受付・登録室・自販機(リラックスコーナー)・ロッカー・トイレ、一階が目録室、二階が閲覧室(Salle de lecture)、三階がマイクロ閲覧室です。
登録が済んだら、閲覧室で史料番号を調べます。史料番号をリストアップしたら、二階の閲覧室に行き、文書を注文します。
・閲覧室には、ボールペンを持ち込んではいけません。メモをとる場合は鉛筆で。ボールペンを持ち込もうとすると必ず注意されます。
・なんですが、閲覧室の席は指定制です。席の札をもらうためには、入って右側の受付窓口(Gichet)に行って、席をください、というと席の札(Plaque)をもらえます。
・席には通常の文書を閲覧する普通の席と、公開が見合わされている文書を閲覧する人の席とに分かれています。通常の席ではデジカメOKで、特に断りなくデジカメをとって構いません。これに対して、公開見合わせ文書閲覧の席は、赤の印がついており、ここではデジカメは不可です。
・席をもらったら、入口正面奥の注文用PCが並んでいる小部屋のPCから注文します。このPCの操作がまた分かりにくいです。まずカードリーダーに閲覧者カードを差し込みますが、すぐに出てきます。この出てきたカードを抜いては行けません。出てきたままの状態にしたままでPCを操作します。
最初はマウスを使いますが、文書番号を打ち込む画面になると、文書番号(その書き方も作法があり、その作法に則らないと注文を受け付けません)を書いて以降はコマンド操作よろしく、マウス操作ではなくキーボード操作でしか先に進めなくなります。このあたりの操作の分かりにくさは実に戸惑います。

■注文数
一回に注文できる数は3つまでのはずで、最大6個の文書を手元に確保できるはずです(記憶があいまいですいません)。
注文してから出てくるまで、大体2時間くらい。ころ合いを見計らってGichetに確認しに行きます。GichetにはPCで注文していた文書を管理するバーコード付きの紙(これをCARAN用語でTALONと言う)があり、閲覧者カードを見せると掛りの人は(たぶんぞんざいに)自分が注文した分のTALONを渡してくれます。その中から読みたい文書のTALONを渡すと、その文書を持ってきてくれます。

■取り置きと終了
文書の閲覧が終わり、もうこのCartonは見ないのであれば、GichetにC'est finiとか言って渡せばOK。まだ終わっていないけど、次のCartonを見たいのなら、Gichetの横に置いてあるProlonger用の棚において、これは延長します、とか言って次に読みたい史料のTALONを渡す。

■APシリーズとDérogation
フランスも史料の公開は基本的に30年ルールですが、現代史研究ではしばしば使われる個人文書シリーズ(AP)の公開は、基本的に60年です。ただし、目録を見ると、このCartonは何年ルールか、というのがリストで載っています。載っていなければ、それがLibrement communicable(特別な閲覧申請が不要で自由に閲覧可能:以下便宜的にLCと記載)かどうかは、都度都度アーキビストに確認する必要があります。
第四共和政のメジャーな政治家のAP文書の中には、少なくとも10年前は60年ルールだったのに、今はLCになっているものもあります(たとえばビドー文書の一部)。

では、60年ルールで自由に閲覧できない場合はどうしたらいいのでしょうか。
この時活躍するのが、DérogationとAutorisationという申請手続きです。この二つは違うものらしいのですが、実際違いはよく分かりません(すいません)。しかし、自由に閲覧できない文書にアクセスするために行う手続き、という意味では共通しています。自分の理解では、Dérogationはまだ公開年月日に達していない文書のアクセスを申請する手続き、Autorisationは基本的に公開が制限されている文書へのアクセスを申請する手続きだと理解しています(どうなんでしょう)。
Dérogationは様式をもらって、そこに書き込んで提出します。博士課程の方であれば、フランス語での指導教官もしくは自分が所属する大学で指導的地位にいる人(学科長、学部長、学長等)の推薦書が必須です。自分の指導教官はフランスを専門としていないのでフランス語での推薦書は無理です、と言う人は、文面は自分で作成してサインだけでももらいましょう。
Dérogationを申請すると、大体2-3カ月で返事が返ってきます。国防機密に関するものでなければ、申請が撥ねられることはまずないと思います。

(追記2011年3月1日:先日CARANに行った際にAP文書のAutorisationを申請することになったのでDérogationとAutorisationの違いを聞いてみたところ、Dérogationはまだ開いていない文書を個別例外的に閲覧できることを意味し、Autorisationは開示はされているが閲覧に許可がいる文書に対するその許可を与えることを意味する、とのことでした。)

60年ルールの文書は、大統領府文書もそうです(こっちは50年というのだったかも)。

DerogationにせよAutorisationにせよ、この手続きによって閲覧するときの注意として、あらゆる種類の複写が許可されないことです。要するに、コピーも取れないしデジカメも不可、ということです。

上記に、CARANの閲覧室の席には二種類あると書きましたが、AP文書は、たとえLCであっても一律に公開見合わせ文書用の席が割り当てられます。ですからLCなAP文書や、TALONに複写は絶対だめ、と書いてない文書であれば、公開見合わせ文書用の席であってもデジカメが取れます。
この時は、閲覧室のアーキビストのところまで行って、用紙に許可をもらえばデジカメ可になります。

コピーも取れずデジカメも不可の場合、ひたすら読みながらノートに取る(もしくはひたすらタイプ)しかありません。個人的体験ですと、500ページくらいの書類が入ったCarton一つ読む(タイプする)のに大体3-4日かかります。デジカメOKだと、大体30分で終了です。閣議史料がオンラインで公開されているイギリス(TNA)とは雲泥の差でしょう。現代史、特にイギリスを対象にした国際関係史・外交史研究が進む訳です。

■その他
・CARANはマレ地区の真ん中にありますが、昼食を素早くとるのに適したお店はあまり近くにありません。パン屋もすこし離れているので、CARANに来る途中で買ってくる方が時間を有効活用できます。

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