2011年1月1日土曜日

あけましておめでとうございます

パリでも年が明けました。明けましておめでとうございます。

ヨーロッパでは年越しはそれほど祝わないので、街には新年を迎えようとする日本のあの独特の雰囲気はありません。夕方に食材を求めてスーパーに行きましたが、クリスマス商戦の売れ残りをはけさせることと一応新年祝いのシャンパンの売り込みが目立ちました。

日本の、年越しと新年の独特の雰囲気は僕は非常に好きです。たぶん、アジア特有なのではないかと思います。一方で、ヨーロッパのクリスマスを迎えようとするときの街の浮ついた雰囲気は、それに似たものを感じます。日本のクリスマスは完全に商戦で、文化的なものではないのだな、ということがよくわかりました。

2010年を振り返ると、やはり在外で日本を家族で出て、しかし秋からはフィレンツェで一人で過ごすという、たぶん普通の人間であればやらないことをやった自分は、たぶん常識が欠如していたのでしょう。とはいえ、研究者である以上、問われるのは自分の中で蓄積していく問題や思考、そしてそれを言葉に書き記した論文であります。

2010年の成果は以下の通りでした。
(1)『複数のヨーロッパ』(北海道大学出版会、近刊予定)内「もうひとつの「正史」」:執筆、入稿、初校返し済み(ただし郵送中)
(2)学内共同研究成果論稿「地域統合史の中の国際協調主義」:執筆
(3)某企画『フランスとヨーロッパ』内60年代担当章:執筆、編者送付済
(4)某叢書:入稿(執筆は2009年度中に終了)
書いたものは、全部日本語です。英語は一本もありません。EUIでの国際関係史セミナーで日本の国際関係史研究の状況を英語で書いたA4で8枚のペーパーがありますが、これはレポートなので、成果とは言えないでしょう。

他方で、口頭発表は
(5)2月のシェフィールド大学でのワークショップ(日本のナショナリズム)
(6)11月のEUI、RSCASセミナー
の二本。どちらも英語。(5)の方は、勤務先学部の用事で、日本のナショナリズムについてなんでもいいから発表してきて、という命令を受けて、統合史との比較でややでっち上げ的に発表原稿をまとめてみた。ところが、そのワークショップの全貌は、実は非常にまじめな日本研究のワークショップで、僕以外はまじめな世界各地の日本研究の若手中堅がそろって報告し、最後にはテッサ・モーリス・スズキが講演する、というもの。詳細を見てから冷や汗が出て、政治学は自分が一人だけだったが、主催するシェフィールドの教授はその筋では有名な政治学の方なので、やや政治学的な議論に修正した報告をすることに。実際、報告はわりとポジティブに受け止められ、安心する。

なお、テッサさんおよび報告で同席した吉見俊哉先生とは、ヒースローからマンチェスター空港への乗り換え時に遭遇し、そのままシェフィールドのホテルまで1時間くらいのタクシーに同乗。朝の食事なども同席させてもらった。発言はラディカルだが、人は大変素晴らしい方だった。あと、発表で一番おもしろかったのは、芸大の毛利さんで、まったくの初対面だった訳だが、あとで日本におけるカルスタの第一人者だったことを後で知る。

それにしても、初めてのイギリスは、大変快適でした。TNAに、2時間程度だったが滞在できたのも大きかった。日本を出る時の成田で、二松学舎のMさんとばったりと会ったのが大きかった。実際、使い方はMさんからほとんど教えてもらいました。

*  *  *

今年(2011年)は、在外研究の総仕上げとなる。長いと思っていた期間はあっという間に過ぎてしまった。EUIのコミトロジー史論文、『複数のヨーロッパ』で取り上げた50年代、2007年の国際政治学会の部会論文で取り上げた70年代、とやりたいテーマは盛りだくさんで、たぶんあと一年ではまとめきれないだろう。

他方で、在外に来てよくわかったのは、日本にいて研究することのメリット・デメリットである。それは、日本人がヨーロッパの学会にInvolveされてないのにヨーロッパに長くいることの意味と直結する。EUIのIさんを見ていて本当に感心するのは、学会へのコミットメント志向の強さで、たぶん、僕は最初からそれを諦めているところがある。それでは話にはならないのだが、それでも、やはり、研究にはそのテーマを研究をする人的なネットワークがあり、それに参加していないのにその研究テーマを研究するのはナンセンスである。残された課題は、そういった点にあるのは確かだろう。

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